食欲不振とは
私たちは、脳の視床下部が刺激されることで空腹を感じます。食欲不振は、食欲が湧かず食べたいという欲求がない状態を言います。食欲不振にまかせて食べ物を食べないでいると、低血糖状態が長く続いたり、お腹が鳴ったりします。
食欲不振の時は、脳が空腹を感じていないだけで、身体は食べ物を欲しています。このため、栄養不足状態が続き、心身に悪影響を及ぼしてしまいます。また、食欲不振の症状は何らかの病気が関係している可能性もあるため、注意が必要です。
食欲不振の原因
神経性食欲不振症(拒食症)
肥満に対する恐怖等から食べることを避け、食べたものを吐く行動がみられます。下剤を使用していることもあります。思春期の女性に多い傾向にあります。ダイエットなどをきっかけに発症し、実際には太っていないにもかかわらず太っていると感じてしまう傾向があります。
20%以上体重が減るケースや3ヶ月以上月経がこないケースもあります。不整脈を起こし、突然死する可能性もあります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されてしまう状態です。常時、動いているような状態が作り出されます。しっかりと食べていたとしても、痩せてしまう状態です。20〜30代の女性に発症しやすいとされていますが、男性が発症するケースもあります。自己免疫異常や遺伝的要因が関係しているといわれています。症状として、多汗や下痢、不眠、精神不安定が見られます。また、甲状腺の腫れや手の震え、動悸を起こすこともあります。症状がひどくなると、心不全を引き起こす可能性もあります。
慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
慢性的に、胃粘膜の障害を起こし、急性胃炎を繰り返す、ストレスなどにより慢性胃炎を発症します。一方、胃・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌感染や解熱鎮痛剤を服用し過ぎる、ストレスにより発症します。薬や胃酸等の刺激が続くと、潰瘍を引き起こします。
潰瘍性大腸炎
罹患数は増えている傾向があります。20代の若年者に発症しやすい傾向にあります。下痢や粘血便、体重減少が見られます。
重症の場合は、発熱や腹痛を起こすこともあります。潰瘍性大腸炎は、再発しやすいといわれています。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
吸収不良症候群
体内に、栄養素などを吸収することができない状態です。主な症状として、全身のむくみや口内炎、下痢を繰り返す、体重減少が見られます。
また、吸収不良症候群は、脂肪の吸収が悪くなります。そのため、脂肪便を排出します。脂肪便は、便器の水の中に浮きます。
胃がん、大腸がん、すい臓がん
胃がんや大腸がん、すい臓がんが進行すると、消化吸収機能が低下し、正常組織とがん細胞の間で炎症を生じます。早期胃がんや大腸がん、すい臓がんは、自覚症状がほとんどないことが特徴ですが、徐々に、発熱や腹痛、食欲低下、体重減少を起こします。
うつ病
疲れやすい、落ち込みやすい、楽しいと感じられないといった状態になります。他にも、イライラ感や食欲不振、体重減少、睡眠障害などが見られます。うつ病になると、自分の力で気分低下を回復できなくなります。適切な治療を受けましょう。
ダイエット
低カロリーの食事や食事の量を減らすと、筋肉や脂肪が減ります。体の機能に悪影響を与え、神経性食欲不振症を発症する可能性があります。そのため、過度なダイエットを行わないようにしましょう。
ストレス
長期間、精神的ストレスを感じていると、副交感神経の働きが抑制されます。これにより、食欲不振や体重減少を起こします。また、胃潰瘍や下痢が繰り返されることは、ストレスが関係しているといわれています。
体内に、食べたものが吸収されにくくなり、食事の量が減ってしまいます。ご自身のストレス解消法を見つけておきましょう。
食欲不振の治療
まずは原因となる疾患や症状を治療し、解消していきます。食欲不振のほかに見られる症状によっては薬物療法を行います。
食欲不振のほかに、吐き気や嘔吐症状が見られる場合は制吐剤を処方し、下痢症状が見られる場合は整腸剤、脱水症状や栄養失調が見られる場合は点滴による補液を行います。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が原因の場合は、胃酸分泌抑制薬や粘膜保護薬などを用いて治療します。ピロリ菌感染の場合は除菌治療を行うなど、原因となる疾患の治療をまず行います。
加えて食事習慣や生活習慣を見直して食欲不振を改善していきます。